実は私、趣味で燻製をやっていまして、ベーコンやハム、魚の燻製などを作ったりもしますが、そうなると食材の腐敗について多少なりとも知識をつけなければなりません。
燻製料理に限りませんが食材を長期間保存、熟成させるためには食材を腐敗させないようにするのが一番難しいからです。
今回は燻製作りの工程から保存食と食材の腐敗について解説したいと思います。
燻製の目的とは
燻製は食材に煙をかけ食材を殺菌し、食材の保存力を高める為に行われてきた技術です。遠い昔より行われてきた人間の知恵であり、また冷蔵・冷凍技術の発達した現代においては保存性よりも燻製による食材の香りを楽しむ為に行うことが多いようです。
燻製の工程
燻製の工程は食材によっていろいろ変わります。例えばすでに加工されている食品を燻製する場合。ちくわ、かまぼこ、チーズ、ウィンナーなど色々とありますが加工されているものは買ってきてからそのまま燻製し美味しくいただけます。
加工されていない食材。例えばベーコンを作るとすると
・塩漬け(熟成) ⇒ 塩抜き ⇒ 乾燥 ⇒ 燻製
というのがおおまかな工程になります。 各工程にはそれぞれ意味があり詳しく解説していきましょう。
なぜ塩漬けにするの? 塩漬けの目的
塩漬けの一番の目的は肉を腐敗させずに熟成させることです。
熟成とは肉の中に酵素という物質があり、それが肉のタンパク質を分解し旨み成分であるアミノ酸に変わる工程です。
しかし酵素がタンパク質を分解するには日数が必要になります。その為塩漬けにし食材の腐敗を防がなければなりません。
塩漬けは食材に味をつけるのと同時に、食材から水分を脱水する目的で行われます。食材の水分を取り除く理由は食材を腐敗させる微生物を死滅させることです。ではなぜ食材の水分を取り除くことが腐敗を防ぐことに繋がるのか。
食材の中には自由水と結合水という二種類の水分が食材に存在し、微生物は自由水の中を自由に動きまわり食材全体にまわり繁殖し食材を腐敗させます。
結合水とは食材のタンパク質などの成分と強く結びついていて、微生物はその水分を活用できません。
塩漬けは自由水を食材から引き出し微生物が生きていけない状態にすることで食材の腐敗を防ぐことができるのです。結合水は食材の成分と強く結びついているので脱水されることはなく食材に適度な水分を残してくれます。
食材から自由水を取り除くには塩漬けや砂糖漬けにすることで浸透圧現象を利用することによって可能です。浸透圧現象の
原理については長くなるのでざっくり説明すると
半透膜を隔てて塩分や糖分の濃度が高いほうに水分が流れ、濃度を一定に保とうとする作用です。
半透膜とはここでは食材の細胞にあたります。塩や砂糖で食材を漬けることで食材の細胞、さらには潜んでいる微生物の体内にある水分をも引き出してしまうので微生物は活動できなくなり繁殖を防ぎ腐敗しづらい状態にすることができるのです。もちろん塩分の量が多ければその効果は高まっていくので、生ハムなどは時に何年間も熟成させることができます。
※浸透圧現象とは別に、水分中にある濃度の違いが一定になろうとする作用は拡散といいます。拡散は浸透圧とは逆に濃度が高い水分が濃度の低いほうに向かい濃度を一定に保とうとします。
浸透圧現象のわかりやすいページはこちら
肉の塩抜き
塩抜きは塩漬けの際に用いた塩を抜く作業です。塩抜きせずにそのまま食べるとしょっぱすぎて食べられません。
ここが一番の味の決め手になります。
塩抜きは基本的には水に漬けることで塩が抜けていきます、上で説明した拡散という作用を利用します。塩漬けにされた肉を水に漬けると塩分の濃度の差が生じ、濃度を一定に保とうと肉から塩が抜けていきます。
ただ塩分濃度が肉と水で同じになってしまうとそれ以上肉からは塩が抜けませんので数時間おきくらいに水を取り替えてあげなければなりません。
水を取り替えるのが面倒な場合は水道の蛇口を少しだけ開け、チョロチョロと流し続けることで新しい水に変わっていきます。
また、塩抜きの技法で呼び塩というものがありまして、水に少しの塩分を加え食材との濃度の差を少なくし少しづつ塩を抜くという技法です。
数の子などの魚卵の塩抜きでよく使われる技法で、真水だと食材から一気に塩が抜かれ食材の味が損なわれるので繊細な食材によく使われるようです。
塩抜きの途中で肉の端を少し切り取って焼いて食べてみましょう。ほっんの少しだけ塩味が効いてる状態がベストです。端の部分なので真ん中はもう少し味が濃いでしょうし。この後の乾燥の工程でさらに身が引き締まるのでその分味も濃くなります。
肉の乾燥
塩抜きが終わったら今度は乾燥に入ります。
乾燥の段階で腐敗を防ぐ為には温度が重要になります。一般的には20以下であれば腐敗が進むことはないだろうとされています。
寒い季節であれば外で干すことが可能ですが、暖かくなってくると冷蔵庫の中で乾燥させるのもありです。もちろんその際はラップなどせずにそのまま放置になります。
手っ取り早く乾燥させたいときは扇風機をつかいます。風は乾燥を促す重要な役割があります。もちろん部屋で扇風機を使用する際は室温を確認してからです。
乾燥が進むにつれ微生物が使用できる水分を無くなっていくので腐敗しなくなってきます。
生ハムが何年間も腐敗せずに熟成できるのも肉の中に存在する自由水がなくなり結合水だけの状態になるからですね。
作りたいものや肉の大きさによって乾燥の日数は異なりますので研究を重ねてみてください。
いよいよ燻製 燻製方法は
乾燥が終わるといよいよ燻製です。
燻製に必要な道具
・燻製器
・チップ又はウッド
・熱源(カセットコンロや電熱コンロ)
です。
燻製器は煙がある程度密閉できて網や吊るす棒などをセットできれば簡単に手作りできます。
ダンボールを使う人もいれば台所で使用する場合土鍋などでもできます。大きいものを作りたいならドラム缶を利用しダイナミックに燻製することもできます。
場所や使用頻度、食材に応じて様々です。
上の写真は私が愛用している燻製器です。
「ユニフレーム」というメーカーの「フォールディングスモーカーFS-600」という商品です。
4年くらい使用していますが特にガタがくることはなく一生使える燻製器ですね。
中も3段の網が取り外しできるようになっており、網を全部取り外し上から吊るせるようにもなっています。ジャーキーやチーズのような小さいものからベーコン、ハムの中型の食材、大型の魚まで燻製できます。
チップとウッドの違い
燻製に使用するもので一番重要なのがチップ、若しくはウッドです。これがなければ燻製自体できません。
どちらもわざと不完全燃焼の状態にし煙だけを出します。火が燃えている状態では燻製器内の温度が急激にあがり燻製が終わるころには焦げて食べられなくなっていることでしょう。
チップは金属製の受け皿などに置いてガスコンロや電熱コンロなどで下から焼き煙を出します。火力が強いと火が出てしまいますので加減が必要です。
ウッドは線香のようなもので一度火が付くと熱源は必要なく無くなるまで煙を出し続けます。
どちらが扱いやすいかといいますと断然スモークウッドです。チップの場合は煙を出し続けるのにずっと火を使いますので家庭で燻製を行う場合は怖くて離れられません。特にダンボール製の燻製器などを使っている場合は要注意です。
ただ、燻製を極めようとするならチップは必ず通る道です。色々な種類のチップを組み合わせてオリジナルの燻製をつくることもできます。
これから燻製を始めるならばまずはウッドから試してみて、ハマってしまったらチップに移行するのが良いかと思います。
チップとウッドはたくさんの種類があります。
桜、ヒノキ、ヒッコリー、ナラ、ブナ、りんご等々、種類はいくらでもあります。
どれを選べばいいかわからなければとりあえず桜からはじめてみましょう。どの食材でも合うオールマイティな香りです。
私の場合は燻製中はその場から離れているので火加減をみるこはできません。その為スモークウッドを使っています。おすすめのウッドははこちらです
「進誠産業」のスモークウッド。 他のメーカーと比較すると火の付きがよく、途中で煙が消えたりすることは今までありませんでした。
他のメーカーでは火が消えることが多々ありましたので数十分おきに火元を確認しにいっていましたが、進誠産業のスモークウッドは燃え尽きるまで煙を出してくれますので満足しています。
まとめ
燻製は一から作るとなると結構な時間を要します。食べたいときにすぐ作って食べられるものでもありませんし、それなりの予備知識も必要です。しかし、一度作ってしまうと結構要領をつかみやすいものでついハマってしまいます(^^)
私も最初はおいしい酒のつまみをいつでも食べれたらなぁ。という簡単な理由で始めてみましたが見事にハマってしまい(笑)今では燻製を作ることが趣味になってしまいました。
また、家族にも評判が良く意外にも子供がおいしそうに食べるのをみてやめられなくなってしまいました。
友達と家で呑むときにつまみで燻製を出すと大好評でして今ではお中元やお歳暮のハムは自作の燻製を配るようになってしまいました。
専門のお店でしか味わえないような本場の燻製を自宅で作ることができ市販の燻製の香りでは満足できない舌になってしまいます。
休日に燻製づくりという趣味をもつのも悪くないですよ( *´艸`)
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